「高菜、食べてしまったんですか!!!!????」
とても美味しかった。その辛さを含め、胃に刺激を与えることを含め、最高の前菜になったと感じた。直後にラーメンが届いた。
ちょっと背脂の凄まじさにびっくりしたが、とてもいい感じの濁り方をしたスープが目の前で湯気を立てている。
コクもありそうだし相当、骨も髄液も煮込んでいるらしい濁り方をしていたが、思ったほど店の中は臭みがない。
期待できるぜ、とワクワクすると、奥さんがその独特の怯えたような心を許していない視線で「まず背脂をまぶさないで(追加の背脂一杯は、丼の一ヶ所に固められて鎮座していたのだった)スープをすすってください。それから―――」
ここで奥さんの心許さじ視線が瞳孔を開ききった状態になり、顔の神経は引きつったまま顔面を僕の顔面に18センチほど前方に接近させ、こう言った―――。
「高菜、食べてしまったんですか!!!!????」
多分、僕の口の周りに微妙に唐辛子の味噌がついていたのだろう。
はい、食べました。美味しかったです。と答えた。
すると、「うちの店は初めてですか?(答える間もなく)何故高菜を食べたんですか? スープを飲む前に何故高菜を食べたのですか? ルールがあるじゃないですか。
まずスープをというルールがあるじゃないですか!」と18センチのまま一気にかましながら、持ってきたラーメンを手放さずにこう言った。
「これをお出しすることは出来ません。マナーに反する人はお帰りください」
唖然とした。
「だってここに高菜が置いてあるから、食べちゃいけないなんて書いてないから食べました。じゃあ、今から水を飲みまくりますよ。で、口の中を洗いますよ。それでも駄目なんですか?」と訊ねたら、また同じことを言われた。
長男を見たら、長男は「あちゃー」という顔で奥でもじもじしている。そっか、わかった。次は旦那さんだ。3秒ほど無表情で見詰めたら、反応があった。
「お客さんは酒を呑みますか? 利き酒って知ってますか? 利き酒をする前に高菜を食べますか? そういうことです。そんな神経の人に食べてもらっては困るのです」
ここでまた奥さんがかまし始める。
「うちは看板も出さずに必死にやっているのですよ。スープを認めてくれないなら、やっていけないんですよ。唐辛子が口の中に入っていたらまともにスープを味わってもらえないじゃないですか? そんな人にスープを呑んで味を判断されたら、もう終わりなんですよ、はぁーはぁーはぁっ」
※追記 2021/09/12 15:07:59
退場ルール一覧
ラーメンより先に高菜を食べたら退場。
スープより先に麺を食べたら退場。
最初にスープを飲む際、かき混ぜてしまったら退場。
店の前に駐車すると退場。
初めての来店者は退場。
スーツケースや地図を持っていると退場。
店内をキョロキョロ見渡すと退場。
どのようなメニューがあるか質問すると退場。
大盛りなど、存在しないメニューをオーダーすると退場。
子供連れは退場。
店内で電話をすると退場。
着信音が鳴っても退場。
写真撮影すると退場。
関西人は出禁。
注:4年前に常連による「時代はインスタ」の一言でルールは全て撤廃しております
また現在高菜の提供はありません
Source: おいしいお
「高菜、食べてしまったんですか!!!!????」